神無月歌会[令和三年]

10月半ばより冬が一気に訪れたかのように寒い日が続きましたが、暖かさが戻り、コロナ感染の落ち着いているうちに遠出して、久しぶりに紅葉狩りにでもと心の動く今日この頃です。コロナ対策のためほぼ2年を、マスクに消毒、検温など面倒に思われることが否応無しに身につき、そのまま冬へ移行すればインフルエンザ予防も万全!強いられた我慢もプラス思考といたしましょう!

さて10月の支部会では、青虹社の川口学代表の掲載歌『宮居の砂』の細やかな描写表現を鑑賞しました。

・明るめる宵の灯に踏む砂のかさ春の宮居にややくぼませぬ

神社に敷かれている砂のわずかなでこぼこを捉えた、『砂のかさ』にはっとさせられます。

・宮砂のみち暗がりを踏みしめて春の憂ひと振り返りけり

参拝を済ませた帰り道、未だ未だ拭きれずに次々と湧き出てくる不安が、『春の憂ひ』に集約されています。

・御手洗の水に涼しく杖の手を濯ぎきよめて持ち直しけり

御手洗で清めた手に『持ち直しけり』と当たり前の表現の中に、いつも頼りになってくれる杖への敬意が伝わってきます。

[10月号誌上より]

・陽も水も澄みて幾世を咲きつげる蓮に驟雨の音立てて過ぐ(金丸満智子)

・手に白き蚕の繭の温かき命こもりし名残のままに(井口慎子)

・紅色に部屋も染まれる八月の大夕焼けに酒たしなまむ(山本浩子)

・簾ごしの透影あはき夏の宵くりやの女の白き腕みゆ(中川りゅう)

・友持参せしぶだうパン手作りの温みしばらく掌にあり(後藤まゆみ)

・紫を寄せ合ふ桔梗の花影へ蝶舞ひよりてやさしき日なり(中世古悦子)

・うつし身の思はぬなみだ心臓の手術より醒めわれ生きゐたり(水本協一)

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