弥生歌会 [令和五年]

どうやら春の陽気となりました。続く寒さにじっと静観を決め込んでいた春の花々が、一斉に咲き始めました。我が庭には20種ほどの椿を植えていて、毎年炉開きの頃には、ピンクの愛らしい抱え咲きの『西王母』、ほんのりピンクがかった猪口咲きの『初嵐』、白に細い紅の筋が入った『秋一声』が咲き、続いて純白の『白玉』、濃い紅の『藪椿』、年が開ければ紅と白の『侘助』、春に向かって、可愛いまん丸の蕾をつける『蜜姫』など、どれもどれも茶室の床に華を添えてくれる椿たちです。そしてようやくこの暖かさに安堵したのか、紅に白の覆輪の『玉の浦』、ピンクに白の覆輪の『三笠の月』、ピンクと白の変わり咲きの『胡蝶侘助』、気品のあるピンクの『有楽』、淡く控え目なピンクの『数寄屋』などなど、ぱあーっと開き、我も我もと得意顔です。そして今年も頑張って咲いてくれたそれぞれに敬意を表して、1日1輪、代わる代わる居間の定位置に生けて、その美しさを絶賛する毎日です!

さて、3月9日はうらうらと穏やかな春の日差しに恵まれ、奈良より水本先生をお迎えして、予定通り近畿支社会を開催いたしました。以下、歌会に寄せられた詠草と添削歌をご紹介いたします。

 

・二三輪古木にひらく白梅に声かけ喜び分かつ母なりし(山本浩子)

・二三輪古木にひらく白梅に声かけし母今年は坐さず

 

・終活と言はれ台所改修すこれが最後か食洗機入れる(中村智恵子)

・台所改修しては終活となさむ春なり食洗機入れる

 

・白銀の遠山脈は見えぬまま感じゆくさへこころ明るむ(井口慎子)

・白銀の遠山脈は見えぬまま心に感じゆくも明るし

 

・気に適ふセシールカットに春秋を経てやコロナの空に嘯く(金丸満智子)

・気に入りしセシールカットに春秋を経てやコロナも果つと嘯く

 

・霜だたみ父の7才の肩おほふ赤きショールに米国へ発つ(中城さとこ)

・霜の朝7才の肩おほひける父のショールに梅子渡米す

 

・鮫の口かたどるミトンに雪だるまやうやくなりて孫ウインクす(後藤まゆみ)

・鮫の口動けるミトンに雪だるまやうやくなりて孫ウインクす

 

・春の夜を鳴くはずのなき草ひばり幽けき声音つと想ひ出づ(中世古悦子)

・春の夜を鳴くはずのなき草ひばり幽けき声音遠き日とあり

 

・古枝にも梅のほころび春近く冷ゆる身内をほのあかくする(中川りゅう)

・古枝にも梅早開き軒下に冷ゆる身の内照らす心地す

 

・春さむく人へ提げ行く奈良漬のかく重しとて新鮮に老ゆ(水本協一)

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