文月歌会[令和五年]

梅雨前線の停滞で恐ろしいほどの雨が続いたかと思えば、まだ梅雨明け前から、連日36度を越す高温となり、熱中症警戒アラートなどという耳慣れない規制に、昼間の外出もままなりません。

そんな中ですが、俳人の友と二人、天橋立から伊根の舟屋群を吟行しようと思い立ち、列車に乗り込みました。ガイドブックを開くと、三重の伊勢大神社と同じように、丹後大江山のふもとに外宮豊受大神社、内宮皇大神社、天岩戸神社の三社が祀られているのを知り、少し遠回りながら、立ち寄ってみることにしました。

京都駅から山陰本線にて福地山へ、そこから丹後鉄道に乗り換え、最寄りの大江山口内宮駅で下車。鉄路は単線で、駅とは名ばかりの無人で屋根のないホームへ降りた時には一瞬どうなるかと・・!少し歩くと観光案内所があり、三重からの訪問だと伝えますと、天照大神は伊勢の五十鈴川に永久鎮座となる前、この地に四年ほどお祀りされたということでここを元伊勢内宮皇大神社と呼ぶようになった事など、詳しくご説明いただきました。

社へは220段ほどの石段を上るのですが、深い山々に閉ざされた地にも拘らず、石段は自然を生かしながら上りやすく整備され、地元での篤い信仰を実感しました。本殿の前には、珍しい皮付きの杉の木で造られた黒木の鳥居が立ち、屋根には伊勢内宮本殿と同じく、10本の鰹木が並び、格の高さを誇っています。そして社殿は三方を高い杉の木立に護られていて、静謐な空気の漂う中、友と二人角のとれた岩に腰をかけ、しばらくの間、森の閑かな息づかいに耳を傾けました。

続いて本殿横の宮川渓谷へ急な石段を下りると、見上げる巨岩の上に天岩戸神社が鎮座。古木の重なる緑に包まれているため全容は見えず、返って神さびた佇まいです。前日までの大雨のせいか、辺りには渓谷の流れの音が響き渡り、山肌からはとめどなく雫がこぼれ落ち、みるみる心も浄化されていくようでした!

去りがたい気持ちをおさえ、当初の目的の天橋立へ向け丹後鉄道に乗り込むと、山また山数えきれないほどのトンネル越えに、小式部内侍の歌『大江山いく野の道の遠ければまだふみもみず天橋立』がふと頭をよぎり、成る程こんなに遠いんだなあ!と。やがて列車は宮津へ。松林と海の青が眩しい!!

さて、7月の支部会は新しい社友さんを迎え、より充実した歌会となりました!水本編集長の添削と共にご紹介します。

・ふさわしく父母を迎ふる棚にせむと心調ふる盆の月なり(山本浩子)
・ふさはしく父母を迎へむ棚にすと心調へ盆の月あり

・庭前に小さき水張田ある家を蛙聲苑(あせいえん)とて季愉しみぬ(井口慎子)
・庭前に小さき水張田ある家を誰も知るなき蛙聲苑とす

・美女の会時経て何時か微女の会直ぐに戻れる学生時代(加藤多美子)
・美女の会時経て何時か微女の会皺の奥には青春ひそむ

・妹の髪姉いたづらに結ひあげて浦島太郎とはやしたてたり(後藤まゆみ)
・妹の髪いたづらに結ひあげて浦島太郎と姉はやしたて

・いたいけな梅あづかりし女の文いつか来るべき別れかなしむ(中城さと子)
・いたいけなる梅子あづかり女の文いつか来む日の別れをおもふ

・国破れ寺に布施乞ふ兵たりし男(ひと)らゐし世も忘れられつつ(金丸満智子)
・国破れ寺にもの乞ふ兵たりし男らゐし世も忘れられつつ

・見えぬとふ恐れつのらせ黒よりも暗き闇知る戒壇巡りか(中世古悦子)
・見えぬとふ恐れつのらせ華厳寺の『暗き闇』知る戒壇巡りか

・しらじらと茅花ほうけし土手歩み老いの憂ひを空に放てり(中川りゅう)
・しらじらと茅花ほうけし土手に向き老いの憂ひを放つ夏なり

・いと易きトマトの湯むき言ひ出せし人知らずして輪切り冷せり(青山玲子)
・いと易きトマトの湯むき言ひ出せし人知らぬまま今日も輪切りす

・スマ友と今日一日を話し合ひ雨降り続く日元気を貰ふ(中村智恵子)
・スマ友と一日の夕べ語り合ふ梅雨暗くとも健やかにゐて

・青山の遠く近くになだりつつ絡みあふ辺のまれに見えつつ(水本協一)

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