令和元年 師走歌会

冬の到来は年々遅くなりつつありますが、令和元年も残りわずかだというのに、年の瀬ということも忘れてしまいそうな暖かな日が続いています。又テレビやパソコンを開ければ列島のあちらこちら毎日のように地震の速報が流れ、大事に到らなければという不安を抱きながらの年越しとなりそうです。
今月の歌誌にも列島を幾度となく襲った台風による水害のお歌が多く寄せられていますが、歌は歌友の皆様の痛みを知り、励ましの言葉を伝えられる貴重な場でもあります。

当初は全くの初心者と不安顔に入会された方々も支部会に意欲的にご参加下さり、今月も意見の飛び交う楽しい会となりました。巻頭の川口同人のお歌

・一杖に足の骨鳴る妖しさを坂におぼえてふり返りたり

ともすれば歌は筋のわかる原因・結果の構成に陥りがちですが、五句目「ふり返りたり」で思いもよらない転換がなされ、意味深長な一首となっています。答えは一つではなく読む人それぞれに解釈が広がるのも楽しいものです。

12月号誌上より

・売れのこる服に科なき赤札を胸にマネキン遠き瞳にたつ(金丸満智子)

・憶ひ出も古りし蛇の目と日和下駄干す軒かげに白菊にほふ(井口慎子)

・牛の群れ渡り過ぐまでバス停まるロシア時間に文句を言はず(山本浩子)

・暑き日を抱き込み入れし海原に人の影なく浜に小屋なし(中川りゅう)

・平安の世に絶えしとふ楽器現在いましめやかに吹き継がれけり(児島靖子)

・十五夜も真近かに老いし足と息リズム整へウォーキングなり(中川寿子)

・夜半よりの野分過ぐるもなほ高く裏の小川の水盛んなり(後藤まゆみ)

・こほろぎにガラスのやうな危うさを聞きつつ月の営み想ふ(中世古悦子)

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