近畿支社会 [令和三年]

11月後半、細胞のすみずみまで緩むような小春日が続きましたが、12月に入るといきなり気温が下がり、日の暮れるまで冷たい雨と風。体を丸めて布団に潜り込んだ翌朝、出ている顔の上部の冷たさに目が覚めると、気温がぐっと下がったのでしょう、屋根や畑には粉砂糖を振りかけたように霜が降りていました。このところの著しい気温の変化に、体を合わせていくのが大変な冬の入りです。

11月の三重支部会は、久し振りの近畿支社会となり、奥様のお供にて、ご療養中の水本先生にお越いただきました。少しお痩せにはなりましたがとてもお元気で、闘病の顛末は程々に、早速提出の自由詠をもとに歌会が始まりました。
いつものように穏やかな口調で、さらにふさわしい言葉遣いや、違った目線からの展開等一首づつ丁寧に添削して下さいました。10時開始の会は瞬くお昼となり、用意した昼食を済ませた後は、サプライズにと準備した手作りのケーキとコーヒーで、快気のお祝いをしました。『水本先生おかえりなさい』と書いたチョコプレートを飾った、大きなガトーショコラを人数分にカット。先生の柔和な笑みと奥様の弾けるような笑顔に、一同安堵し、また先生にご指導いただけることを喜びました。

午後は時間の許す限り話しましょう!とおっしゃり、新青虹11月号を開いて質疑応答、歌の詠み進め方など核心に触れたお話を、お帰りの時間ぎりぎりまで精力的にご指導いただきました。先生と奥様をお見送りしたあとは、ほっこりとした余韻の中で、皆で良い時を共有できた幸せに浸りました。

[11月号誌上より]

・師は老ひて描かす暑中の葉書絵の糸瓜自在のかたち味はふ(金丸満智子)

・自由なる想ひ遊ばす部屋はあり広き空へと窓開きゐて(井口慎子)

・窓ちかく虫の音すだく千切れ雲浮かべる空に宵の月出づ(山本浩子)

・宣長を祀る社のすぐ脇の店に穏しく自然薯すする(中川りゅう)

・蝉声に飲むコーヒーに夫と吾の歩みし日々を偲ぶ朝なり(後藤まゆみ)

・稔り田を小鷺の群れに追はれつつ刈りゆく老の背の豊かなり(中世古悦子)

・若き日に録りしファドなど病棟の枕に聴けばこの世遠くす(水本協一)

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