文月歌会[令和三年]

暑い暑い日が続きます。そして収まりかけているかに見えたコロナ感染は、ワクチン接種が進んでいるにも関わらず、危機管理の緩みをついてか、かつての感染者数を更新する日々です。そんな中、幾多の障害を振り払い東京オリンピックが幕を開けました。連日繰り広げられるアスリート達の真剣勝負に引き込まれ、結果に関わらず彼らは多くの感動を与えてくれています。またこの非常時において、オリンピックの進行に尽力されている大会関係者の
方々のご苦労は計り知れません。すべての競技を無事に終え、滞りなく閉会式が迎えられますよう祈るばかりです。

7月の支部会は、外出も憚られる暑さの中、皆様お元気にお集まりいただきました。それぞれの掲載歌を鑑賞しながら、多くの学びを得られる短歌の集いは、制限を強いられて久しい身と心に活気を与えてくれるようです。では、百一歳を迎えられた安江とくよ同人のお歌、『こころ豊かに』より皆様の心を深く捉えた三首をご紹介いたします。

・はっきりと今見し夢が眼に残る白く大きくあの花ゆるる

・刻々とペン持つ指の力ぬけ書きたきことが心にのこる

・百一歳手鏡にみるまだ『女』白髪の眉毛と唇のいろ

短歌にはその人の生きざまが露わに反映されます。全国の社友の皆さまのお歌を拝見することで、多くの生きるヒントを頂く思いです。

[7月号誌上より]

・暮れ初めし畑に手馴れの鍬かまの影と爺ばば夕月あふぐ(金丸満智子)

・涼やかに風と散りくるさくら花今年のことはことしかぎりと(井口慎子)

・新緑の夕べ電車にゆづられて席に坐れる母娘あり(山本浩子)

・存ふに然したるものも見つけ得ず仰げる空は果てしなくして(中川りゅう)

・葉桜の夕日に照らふ山ぞひを低く桃花の咲き初むるなり(中川寿子)

・幼子の両の手広げ見上ぐれば髪にひららと桜舞ひ散る(後藤まゆみ)

・地を低く響かせ及ぶ蛙音をゆりかごにして寝ぬる小夜なり(中世古悦子

コメントは停止中ですが、トラックバックとピンバックは受け付けています。