水無月歌会[令和三年]

今年は梅雨入り宣言が例年よりもかなり早く、それならば早く明けるのかと思いきや、宣言後は五月晴れを取り戻したかのように、爽やかに晴れる日が多く、ようやく梅雨らしくなったのはここ2、3日のように思われます。汗がべたーっと体に張り付き、とりわけ洗濯物が乾かないこの時期は身も心も晴れません。

ところがひと度野山に目をむければ、草木は空気までも緑に染めてしまうほど、それぞれの緑を精一杯に育んでいて、やはり一年の中でこの季節が無くてはならないものであることを実感します。

去年の夏、知人が大きな水甕に大切に育てている睡蓮一株と、そこに共生させている数匹のめだかを貰いうけ、我が家にある一番大きな甕に移しました。どうやらうまく適応したらしく、睡蓮の株は毎日のように新しい花を咲かせています。そしてめだかも冬には表面が凍る水甕の中で命をつなぎ、去年よりもひと回り大きくなって、子も孵りました。目は砂の粒のように小さく、細い針のような子めだかが、睡蓮の浮き葉の隙間に時より姿を現すのを見つけては、その小さな命にエールを送っています。

梅雨の雨によって毎日充分に満たされる水甕に、花もめだかもご満悦のようです!

さて、三重支部ではコロナワクチンを既に接種された方も多く、歌会への参加の不安も少しは軽減されたように思われます。

今月は、新青虹誌の巻頭歌となった金丸さんのお歌『春の海辺』十首を、ご本人に解説をしていただきながら鑑賞しました。漁業を生業にする人達の生活や想いを、選び抜かれた言葉でテンポ良く詠まれたお歌に、みな感心しきりでした!

[6月号誌上より]

・砂浜に乾く流木老い深むいこいにかなふ温みありけり(金丸満智子)

・ひと本の庭の古木を好むとふ幼なのあればながく残さむ(井口慎子)

・もろもろを清めゆく火に包まれて冬より春へ向かふ奈良なり(山本浩子)

・初午に小さき稲荷を掃き清め面輪やさしき人したくせり(中川りゅう)

・未明なる地鳴りに目覚め独り居を心にとどめ深呼吸せり(中川寿子)

・神殿に子の厄払ふと額づきし我が拍手の響く春なり(後藤まゆみ)

・海よりの風に耐へつつ歪み立つ松なづるやに春の雨せり(中世古悦子)

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