令和元年 長月歌会

すっかり秋らしくなりました。

虫の音とともに例年ならば九月下旬には現れる法師蝉もようやくリズミカルに鳴き始めましたが、お彼岸には必ず畦を染めた彼岸花をあまり見かけません。一体どうしたのでしょうか!

今月は新青虹掲載の先師吉原徳太郎先生のお歌「離宮秋石」連作11首を鑑賞しました。

・いにしへゆ清けき離宮一条の敷石みちに高き日ありき

・木々黄ばむ桂離宮に陽のさして石灯籠は地に低くあり

・心なき所作あるまじく秋庭の石より石へつたひ来にけり

桂離宮内の石組み、敷石、飛び石、石灯籠、石橋などを詠まれたものです。もちろん当時を代表する作庭師によって配された、どれひとつとして無駄のない石たちですが、ここに又新しい命を得たように思います。只々その着眼の多様さと言葉選び、調べの美しさに唸るばかりです。

9月号誌上より

・若人のいのちと沈む戦艦の歳月おもし世に継がれ来て(金丸満智子)

・和音すむ位置耳慣れて琴の柱(じ)を立てゆく友の白襟すずし(井口慎子)

・舞鶴の記念館より取り寄せし白樺日誌に兵士の夏あり(山本浩子)

・落とされし巣の上を巡り去りがてに燕哀しく宙返りせる(中川りゅう)

・川満ちてわづかに見ゆる橋脚をときに明るめ雨雲うごく(中世古悦子)

コメントは停止中ですが、トラックバックとピンバックは受け付けています。