山岳小説の第一人者として活躍した新田次郎は、青年時代は中央気象台に勤務し、富士観測所の交替勤務に就いた。2年半弱、青虹社の社友として107首のお歌を遺しています。その中から富士山頂の生活ならではのお歌を紹介します。富士山からは伊勢湾も見えているのですね!
・伊勢湾の見ゆる視界の遠けれどやがては暮れむしばし見つむる
・生きるもの影だにあらぬ岩山を包みて赤く雲のかがよふ
・雲の上のすがしさを見よ曇る夜の山の下びの今宵寂しき
今月は青虹に入社はされましたが、まだ自分では歌を詠むことが難しいとおっしゃる方に先輩の方から様々のアドバイスがありました。先づは気負わず詠もうとする題材を31文字に置いてみること。焦点を少し変えれば同じ題材から幾首も歌ができ上がること等々…。青虹誌へのデビューも間近だと思われます。
「新青虹」二月号のお歌より
・海ちかく余生し月の満つる夜は校庭に棲む兎見むとす(金丸満智子)
・松の木と対話する如葉を摘める人静かなり秋空のもと(井口慎子)
・九十五歳一切自立の母のなり娘の老いの模範にしたり(山本浩子)
・天心の光かそけき月仰ぎ会うこと難き友思ひやる(中川りゅう)
・黒染という名の駅ゆ乗り合はす娘は黒きお下げ髪なり(中世古悦子)
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